日本人にとって誰もが嗅覚に覚えのある朝餉の台所から漂う香りがある。
私であれば、幼少時、硫化イオウの強烈な臭いのするネギの刻んだ八丁味噌の香りであろう。名古屋人にとって味噌は赤みそ、それも八丁味噌と決まっている。今時、料亭ででるような上品な赤だしではないのだ。
初めて白みそというものを味わった時には、カルチャーショックを受けた覚えがある。
生まれてこの方味噌汁は色濃いものだと信じて疑わなかったものだから白みそを口に含んだ時には、日本にもスープがあったものだと感心したものだ。
幼子の時に舌の味覚と嗅覚に毎朝、訓練を強いられたものだから、上京してその味と臭いに慣れるまでは訓練に相当の歳月を要した。
みそ汁の具もネギと豆腐だけは決まっていたが、その他はあり合わせのものと決まっていた。
「まなざし」という親子の介護生活を描いた映画の中で、最初のシーンが朝餉の支度をしているところから始まり、まな板でトントンネギを刻む音に味噌汁に煮え立っているシーンが印象的であった。
次第に介護する娘が疲弊して、トントンの後と温かい味噌汁がコンビニ弁当に代わっていくというストーリー展開。
どんどん要介護者である老人の食欲が無くなっていく対照的な場面に手の温もりの加えられた食事が如何に食べる人側からは必要なことかを思い知った。
その人にとってどんな朝餉の食卓であったかを想像するだけでも、食事に一工夫をしてみる価値があることであろう。
介護アロマ導入は、必ずしも精油だけでないことを過去の生活背景を知ることから実践をすることができる。