「あの頃のにおい」という滝田ゆう展に寄せたエッセイが新聞に掲載されていた。

滝田の寺島奇譚の舞台は東向島界隈。いわゆる永井荷風の墨東奇譚の舞台と同じだ。

色町に生きる人々の機微が描き出され、滝田worldは私の幼少時の昭和30年代の空気が伝わってきた。

デカダンスという言葉も古めかしいが、あちこち鯨飲した学生頃を思い出した。

青春ユートピアがあの頃のにおいであろうか。

懐かしく愛おしい切なさがふるさとへの思いをそそる。

年寄りにとって何より心落ち着くのはあの頃のにおいなのである。

最近私自身がモノクロ映画の30年代の映画に凝っているのも

あの頃の匂いを求めた自然回帰現象なのかもしれない。

瀬戸内の牛窓のドキュメント映画「港町」であの頃のにおいに

心穏やかになった。

精神安定剤よりも効く映画であった。

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