「人生フルーツ」という映画上映会の看板が電柱に貼り付けてあった。
私が地元開催している介護アロマ講座の同じ会場で鑑賞できるというので早速、朝一番の上映会に出掛けた。
以前にも人気のあった米国映画「ターシャテュ-ダ~静かな水の物語」という映画を鑑賞したが、
こちらの方が親しみを覚えた。
まずは舞台となるのが愛知県春日井市高蔵寺ニュータウン。
私の通った高校の母校が沿線沿いにある。
戦後復興の兆しとなった昭和30年代の夢のニュータウンは、関東の多摩ニュータウンの後追いするように構想された。
舞台は高蔵寺ニュータウンの一画の300坪の津端宅(は師匠であるアントニン・レーモン氏の個人住宅を再現した)
ご主人修一さん90歳(2015年当時)奥様英子さん87歳。
日本公団住宅の陣頭指揮を執ったニュータウン建設に関わった建築家。
今はまるで建築家だとは思えない生き方真反対のスローライフを
余生いや生涯現役を楽しんでおられる。
通常イメージする優雅な年金暮らしとは一線画している。
「風が吹けば落ち葉が落ちる。落ち葉が落ちれば土が肥える。土が肥えれば果実が実る」
このフレーズが何回となく上映中、樹木希林のナレーションで繰り返される。
老夫婦の普段の生活が「こつこつゆっくり」と描き出される。
時折、若き日の映像を交えながら紆余曲折があって、今日のスローライフに至ったと知る。
ご本人は建築業を卒業し、その後は「自由時間評論家」と称して執筆講演活動もしつつ、
自給自足の生活を積極的に実践している。
悠々自適とはこういうライフスタイルを言うのではないか。
結婚のなれそめがヨットの国体の会場(愛知県半田市)で、
当時東大ヨット部であった修一氏が200年もの伝統を誇る造り酒屋の泊まったことから、
酒蔵の一人娘だった英子さんとの出会いがあった。
東大ヨット部は強豪校であることは意外と知られていないが、
私も学連のヨット部であったことから体力だけでなく知力も必要とされる競技である。
老後のお二人はやりたいことは何でも挑戦しやってのけるところが凄い。
生活のあらゆることをやる自給自足生活である。それらはボケ防止にもなっている。
家庭菜園という素人農園をはるかに超えている。
野菜も果実も種類豊富にせっせと土づくりから本格的に栽培し、その収穫物を周りに段ボウルに幾つもお裾分けする。
・絵を書き込んで一日10通ものはがきをパソコンでなく手で書く。
・最晩年まで設計に関する相談をボランティアで実践し、常に頭も使う。
・名古屋の中心地にまで時々買い物に出かけ、外出する
・車は使わず自転車か公共機関を使う
・宅急便にはわざわざ荷物を運びこむ
・旬の作物を自ら作ったたい肥で育てる
里山を背景に庭には落葉樹を植える(高森山にドングリを植える住民運動をした)
・あるゆる野菜果物を育てる
・ベーコンや一夜干しまで手掛ける
元大手商社マンの私の友人にもスローライフを揖斐川の上流で晴耕雨読しているツワモノがいる。
人間最後はどう人生を締めくくるか?
自由自在の心のままに自然と共に生きる人生こそ老子の「タオの世界」ではないか。
この映画の中では医療も介護も無縁であった。
修一さんの最後の死も草取りの後、昼寝して永遠に帰らぬ人となったというから理想の死を遂げた。