渋谷のアップリンクは自主再作作品が多く、時々気になるテーマがあると顔を出す。
監督自らが介護現場で働いた体験をもとに自主制作した作品が「まなざし」だ。
上映初日となって監督・脚本家・キャストら勢ぞろいのお出迎えに、満員御礼の館内は熱気で包まれていた。
それに比べて映画は熱気とは裏腹で陰湿でしめっぽい映画シーンが続いた。
冒頭の台所で食べ物を刻む後ろ姿がラストのシーンの伏線であったとは知る由もない。
コンビニ弁当の入った袋を下げて勤務を終えて、玄関の扉を開く。
茶の間でテレビを前にいつものコンビニ弁当をおもむろに食べる。
刑務所歴のある父親のおむつ交換をする。そして部屋を出る。
このシーンが繰り返し繰り返ししつっこいほど延々と続く。
この繰り返しのプロセスは少しずつ介護者の生活の荒れていく様子が、画面から伝わってくる。前回のためこみ症でゴミの山に囲まれていく。
延々と続く家庭介護支援者の心のよりどころを見失ってくいく。
日常生活のやるせない気持ちをどこにぶつけていいか戸惑いを隠せない。
しかもご本人自身はプロの介護職に就いている介護職員にもかかわらず、いざ自分の身内になると話は別だ。
繰り返される例のシーンの最後が介護者と要介護者に交わされる眼差しであった。
提供する手作りの食事が拒否反応を示す要介護者の心を変えた。
食事や排せつ介助もケア同様、強制行為であってはならない。心が病んでいては介護は続けられない。
介護は生身の人に、心を置く仕事だから。