ある訪問美容師が、現場の施設や個人のお宅に来る気配が、アロマランプから漂う香しい匂いと胡弓の奏でるサウンドから感じられるという。
訪問先では洗髪や施術カットなどの手作業だけでない五感をフルに活用している。
その雰囲気だけで待っている高齢者はほっと一息するのだという。
まさに彼女の人間力は高齢者の五感を満たし、脳を喜ばす介護アロマセラピストのお手本のような行動をしている。
その週のNHKの「ためしてガッテン」では慢性痛は側坐核が影響し、痛みを和らげるという内容であった。
側坐核が分泌する脳内の鎮痛物質が慢性痛を緩和するという。
その美容師さんの彼女が来ると、待っていた高齢者の側坐核にいい影響を及ぼし、痛みを軽減するからだと推測される。
こんなエピソードもお話していただいた。
今はコミュニケーションも取れない老婆に何年ぶりに洗髪し髪を整えて差し上げたら、手招きし何やら彼女に指示するのであった。何んだと思ったら「手鏡をよこせ」と言うのであった。
美しき変貌した自分自身を見たいというのであった。
女性はいつまでも美への追求をしているのだという老婆が美しき変貌した姿を見て、目標を失った人生に輝きを放つ人生へと切り替わった瞬間であった。
そして彼女に自ら握手を求めてきたのだという。よほど嬉しかったのであろう。
後で聞いたらそのお客様は、若い時分からパーマ屋さんに行くのが唯一楽しみであったという。
きれいにするという当たり前の行為が現実には介護保険でも適応されていない保険外サービスであるカット洗髪などの整容が、見失った人生の目標を再び復活させたことへの報酬は何よりも生きるための処方箋であった。
この続きは、次回にて。